[船での暮らしは悪いものではありませんでした。
クルーも乗客も、それなりに優しくしてくれたでしょう。食堂などで会う人がいれば、それなりに話もしたでしょうか。社交的な性格ではありませんでしたが、別に人を寄せ付けないオーラなど何もありません。華もなく毒もなく、わたしは船内で慎ましく過ごしていたと思います。
コーヒーを淹れてくれる方がいれば>>25、甘めでとお願いしたと思います。どうしても苦いのは苦手だったものですから。もし、食堂で静かな時間が流れるのなら、わたしはその時間が好きでした。
そう。慎ましく過ごしていました。部屋に引きこもりすぎることもなければ、アクティブに動き回りすぎることもありませんでした。話を拒むことはなくとも、自分から話しかけることはあまりなかったかもしれません。
それは地球に居た頃のわたしと、何も変わらなかったと思います。出発前の「決意」を思い出して、心の中で苦笑します。
そう、“置いてきたはずなのに”。]