[突然発生した、船外作業中の事故。
仲間からの最後の無線、宇宙に投げ出され長く揺蕩い、薄れて行く酸素の中、永遠の眠りを覚悟した事を、自分はきちんと覚えている。
だからこそ、このような場所に居るのが信じられない。
久しぶりに感じる重力と、地球日本風の建造物。神秘的ではあるものの、広がる懐かしい色彩。
宇宙服ではなく、割烹着を身に纏う女性……と思しき存在の外見は、ホモサピエンスたる人類と瓜二つだ。
故に錯覚する、地球に帰って来たのかもしれないと。
在り得ない可能性に混乱を覚えながらも、何度も思考を正常に引き戻そうと奮闘を繰り返す。
果たして夢か現実か。
もしかしたら、自分は別国の宇宙船に回収されたのかもしれない。
もしかしたら、遥か未来の地球技術で蘇生されたのかもしれない。
もしかしたら、宇宙人に拾われたのかもしれない。
特別、地球外生命体の存在を信じていると言う訳では無かったが「もしかしたら」の期待を込め、ボイジャー探査機にゴールデンレコードを積んだのが我々人類だ。
そうして高い可能性を脳内に並べ、否定し潰し、もしかしたらを何度も重ねた果て。
ようこそに続く彼女の言葉を聞けば、自分はやっと理解した。]