なんだ、幾ら欲しいんだ。
[笑いながらそう言って、懐から出したのは財布──ではなく、小型のガラス端末。“うっかり”返還し忘れているそれを「あ、間違えた」と言ってしまって、今度こそ財布──ではなく、小切手用子─誤字ではなく、電子と用紙をかけている──を取り出した。
一番上の薄型パネルに金額を書いて、そのパネルを千切る形式のもの。
金額を書く前に電源を入れる際、生体認証をして誰の口座から該当金額を引き落とすのか、登録をして金額記入をする。
男はデジタル小切手用子の電源を入れて、口座の認証がされたことを確認すると、どうぞ?と半笑いで目の前の赤毛に差し出した。]