― 春・四月/3-A教室 ―
[3-Aと書かれた札が映る。
放課後なのだろう。室内には多くの生徒がおり、
新学期特有のそわそわした空気が感じられた。
今年は特に最終学年、受験が控えているということもあり、
単語帳を眺めたり、足早に教室を出る者もいる。
幸阪結月もその一人であった。
友人が彼女を呼び止める。]
あ、ごめーん。
今日は図書室だから。
[結月は友人の誘いを断った。
言葉だけを見れば図書室で勉強するかのような物言いだが、
生憎結月はそこまで勉強熱心ではない。
成績も現状、中の下と言ったところだ。
代わりに運動神経は上の中辺りに位置しているが、
残念ながらこの場には必要のない情報である。]