手紙を読み終えた研究員は、物が山積みになったデスクに封筒を置いた。
事故では多くの命が失われた。
研究員だけではない、実験体も、命になる前の実験体もだ。
その後、連日のように上層部の人間、研究員だけでなく育成施設の子供たちまで事故調査委員会に呼び出され、ほとんどがそのままこのリージョンを離れた。
――チエンドゥーは離れてて正解だったかもしれないな。
ぼんやりとあり得なかった過去を考え、研究員は自嘲した。
――あいつならきっと生み出された命たちのこと考えてここに戻っただろうから。
この男が知るチエンドゥーはそういう人間だから。