矢張りそうですか。
憶之ヰさんの秘蔵っ子ですもんね。
[と笑って。
じゃあ、僕が勝つのは難しそうかな、と。
何を望もうとしていたのか意識に上がることのできなかった願いは、そのまま夜に溶けていき。傾げられた首には曖昧に笑ってみせる。]
じゃあ、僕が勝つのは難しそうですね。
[まだまだ修行が足りないと、祖父にもどやされてばかりだから、と笑う顔は、少しも悔しそうではない。
弱いほうではないだろう。”負けはしないが、それだけでは勝てない”と、評されている。
ただ謂われるままに修行しているだけで
−−−勝ちたいという気持ちも、負けたくないという気持ちもないのだから仕方あるまい。]