[高校二年生の夏の終わり、美術部を退部してから
結月は図書室に通うようになっていた。
前述の通り、勉強のためではない。
課題をやらなかったと言えば嘘になるが、
大半は司書や図書委員の手伝いをして過ごした。
見知った顔がいた訳ではないし、
手が足りないということもなかった。
故に当初は困惑半分迷惑半分といった具合だったが、
絶対に邪魔はしないからという結月の懇願により許された。
そんな居心地の悪い半年間も終わりを告げることとなる。
始業式の翌日、3年A組最初の委員決めで
結月が図書委員の座をもぎ取ったからだ。
全員が委員になる必要はない上に今年は受験もある。
勝率は十分高かったが、最後は結月の拳が勝負を決めた。
ありがとうグー。信じてたよじゃんけん。
あの時の喜びを思い出すかのように握っていた指を開く。]