[そして今度は此方が、相手に眉根を下げさせてしまった。>>43
生身の者の素性だって心だって、ヘロンが知るあの妖精ができるようには読み取れない筈なのに。
夢の中の夢が如く、酷い雨と、ずぶ濡れのふたつの影がぼんやりとカメラアイに映り込む。
これは、未だにスタッフに預けっぱなしの風船に籠められた魔法がこの機体に何かの御業を為した故か。それとも――。
曖昧にも聞こえる“白狼の姿のひと”からの返答に、ヘローも曖昧に一度頷いてみせる。
自分から差し出せる傘のアテも無しに降りしきる雨の中にいきなり踏み込みはすまい、というヘローなりの配慮だった。]