X-Day
[その“30日後”当日
>>#0を迎えるまでの間にハリコが何をしていたかは、一旦置いて。
“ショー”の予定が入った道化師の代わりに独房の前に現れた、清掃……ではなく正装のエスコート
>>3。
果たしてその顔かたちへの見覚えは、ハリコには――――なかった。覚えていなかったのだ。同時期収監とはいえ区画を分けられていたというだけでなく、塀の外に居た時の、名を与えられた“名も無き”使用人のひとりとしても。]
っ、……………
[その若い男の姿を見た時、その場に座り込んでいたハリコはまず、反射的に己の両腕を抱えていた。それこそ「お嬢様を疵物にした」
>>0:291犯罪者にでも出くわした女の態で。
アリシアにあのドレスを仕立てた際のハリコは、身分も性別も問わず、誰に対しても明るく落ち着いて接していた。
その時とまるで異なる怯えの仕草は、ハリコがこの男――レイルの顔を全く覚えていないことを十分示していただろう。相手がハリコの身元についてきちんと調べていたのとは対照的に。]