[それでも看守たちとは異なる顔のその人が檻の鍵を開け、“レディ・ハリコ”を迎えに来た旨を告げた>>5時には、ハリコの身体が勝手に示した怯えもすぐに消えてくれた。]
あなたがミスター・レイルね。
売れっ子のピエロさんから話は聞いているわ。
[安堵を笑みの形で示しながらハリコは立ち上がり、「ちょっと待って」と小さく告げてから、備え付けの洗面台の蛇口を捻った。
こぽこぽと流れる微かな水音は、程なくダクト越しに響く爆発音>>4>>11――まるで花火のスタートのよう!――に比べれば些細なもの。
それから、粗末な寝台の枕元に置いていた手提げ鞄(買収で得た品ではなく、正規の購入品だ)を一つ手にして、鍵の開いた扉の前へと。]