お待たせ。
それじゃあ、素敵なクルーズの旅に連れて行って頂戴――
陽だまりのお姫様の隣が似合うあなた。
[ここでの“陽だまりのお姫様”とはハリコ自身のことではない。素面でそう自称できる女では流石になかった!
貴族に仕える使用人の顔こそろくに覚えてはいなかったが、クライアントの少女が度々口にしていた名――“レイル”であれば聞き覚えがあった。その名の記憶と、今目の前にいる“レイル”の装いから、ハリコは「もしかして」をさりげない形でくちびるに載せていた。
こうして片手にはレイルの手を、もう片手には何かの詰まった鞄を握りしめ、ハリコはその脱出ルート――調理場までの道>>1:342>>1:343>>1:344を駆けていく。*]