[ヒトの身体とは、こうも美しくなれるのか。
地を駆ける脚、しなやかな四肢と共に舞うブレード。
ワンテンポ遅れて噴き出す自分の血液は、それを飾り立てる為の物とも思えた。
それが自分の、失った声の記憶。
無慈悲なものほど、美しいものはない。
なぜならば、無駄な物が削ぎ落とされ、洗練されているからだ。
些細な感情の味付けこそあれど、どの戦場でもそうだった。
こればかりは自分の知るところではないのだが、もしかしたらあの一閃は、相手から理由が抜け落ちて居るからこそ、猶更と美しかったのかもしれない。
生きて戦場に居れば、運があれば、またいつかあの美しい影に出会える気がして。
次はこちらが撃ち抜くために、些細な感情の味付けと共に武器をとるのだ。
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