―いつかの戦場で―
[ここからそう遠くない場所で、大きな衝突があったらしいと聞き向かった場所には死体が溢れていた。
硝煙と焼けた肉の匂いが立ち込んでいる。
聴覚と視覚の出力を最大にして、辺りを探る。瓦礫に砂が擦れる音、風が布を擦る音、その中に僅かに混じる呼吸音を見つけ、足早に向かう。
音の主は、ヴァルハラ兵だった。
周りの死体と瓦礫をどけて、状態を確認する。致命傷はなさそうだ。パワードスーツが犠牲になったのだろう。
「死にたくない」と擦れた声で繰り返す男の手を握ってやる。]
死なせない。
[致命傷はないが、このままではいずれ死ぬ。
手早く応急処置を施し、男を担いでその場を離れる。ここに来る前に見つけた崖の窪み、そこなら雨風を凌げるだろう。]