[さて、ハリコが水を少しずつ流し始めた洗面台の排水口には予め、看守の目が離れたタイミングを見計らって、あの時ケンチクから“詐取”した保冷剤>>0:371>>1:52>>1:264の中身が流されていた。
念押しとばかりに、支給されていた生理用品の中身まで混ぜ込んで。その下にはさらに幾らかの札束も丸めて詰め込まれていて……。
つまりこれから何が起こるかというと、この洗面台は、詰まる。
洗面台に少しずつ溜まっていく水は溢れ、独房の床を水浸しにしていく――というもくろみ。看守の注意を多少でも引き付けられるだろうし、大水でもない浸水であれば“花火大会”の火を消すまでには至らないだろう、とも。
序に言えば、手提げカバン及び排水溝に入りきらなかった残りの資金――独房の床に残してきた札束の包みを、他の誰かに安易に使わせないための工作でもあった。
水浸しのカネでもいいなら、持っていくがいい泥棒!**]