ええと……それでは、このトーストに、レタスとトマトを挟んで頂いてもよろしいでしょうか。
[控えめに微笑みながら、先程、店主が言っていた野菜をリクエストした。
自分の名前と、悲しんだ記憶しかない状態で、迷い込んでしまったような街。
とても心細かったが、そこでこの店を見つけ、美味しいスープを頂いて。
街にいてもいいと言われ、それもいいのかもしれない、と思ってしまった。
厚意に甘えるのは申し訳ないから、その時にはしっかりと稼げるようになる心算だけれど。
──一方で、そんな考えは、逃避とも考えられる。
けれど、自分が“何”に傷ついていたかを思い出すのは、怖い。*]