>>46
[足元に視線を落とす。
声の主――小柄な笛吹きが、ぐいと背伸びをしてこちらを見上げていた。
瞳の奥が、揚げたての饅頭よりも熱そうにきらめいている。]
なるほど、“お金を貸して”と来ましたか。では質問を返しましょう。
あなたは、その一口で――何を演奏するつもりですか?
(ポケットから硬貨を一枚、指で回しながら)
味に感動して吹くのか、満腹に酔って吹くのか。
それとも……その場限りの音を交換するために吹くのか
(カランと音を立てて硬貨をラスカの手のひらに落とす)
いいでしょう。
ただし、“この貸し”は通貨じゃなく、“音”で返してもらいましょう。
今夜のどこかで、私の耳があなたの音に触れたなら――帳消し、ということで