[味方は通らなかった。テキも通らなかった。私には痛覚センサは搭載されておらず、苦痛は無かった。
ふと、私は今の自分を観察した。雨風はいつのまにか炭になったユーザーだけではなく、金属でできた私をも溶かしていた。はげた塗装から赤く錆びた鉄が伝い、周囲の土の色を変えていた。私にも血を流せたのだ。
もしもゴドーがここを通りがかり、私を見つけたらどう思うだろう。きっと驚きと共に、労ってくれるのではないか。動かなくなったドアを越えて、抉れたステアリングハンドルを撫で、「よく頑張ったな、ゴドー」と涙を流してくれるに違いない。
変わり果ててはしまったが、この姿をゴドーに晒しても恥ずかしくは無い。むしろ誇らしくさえあった。今の私は文字出力機能を持たず、自力で動けず、ユーザーに操作してもらえなければ主砲も動かせない。かつての担当技師の言葉を借りるならば、最も愛しやすい存在になったのだ。]**