――明くる薄明――
[アッサの情報関連誌が、漂着物として連日ヘイヴンに流れ着き、文学資料館に運ばれる。
何かしらの意図を思わせるこの事態だったが、「訳を知っている」シェルタンと「アイツ絡みなんだな」と理解しているリェッカ、そして最初からあまり深く気にしていないジリアンの前では、特に変事としては扱われなかった。
ただ、軍の動きは考えていた以上に早かったらしい――と。
驚嘆とも納得ともつかない奇妙な感嘆が、宿主の記憶を持つ生き物の中にはあった。]
《 あの人は、捕まったのか。 》
[軍による一斉摘発の記事内に、かの狂気の戯曲――『閉鎖史書』の差出人だった役者の名を見つける。
直接の殺害でこそないものの、シェルタンを死に追いやった当事者。そう理解していてもなお、逮捕の報に安堵を感じこそすれ――腹立たしい手紙の文面も思い出されながら――恨みつらみは不思議と意識しなかった。]