― いつかの ―
……理由?
[当時、長く同室であった女性囚人の指の骨を折った際、女はきょとんとした顔でこう言った。]
だって、可愛い人だったから
[その人の事、可愛くて、好きだと思ったの。
だから殺したかった。けれども、こんな檻の中ではそれは叶わないから。だから、せめてもと指を折ってあげた。鋭いフォークの1本ぐらいあれば良かったのだけれどね。]
皆だって
愛おしい人を抱きしめてあげたいと
そう思うでしょう?
同じだわ
[ふざけて居るのかと、看守から怒鳴られ殴られても、罪の意識は欠片も無い。
与えられる罰の理由も分からぬまま、長い体罰を大人しく耐え、髪を掴まれ別室へと引きずられて行く。
整った顔は腫れ、あちこちから血を流していたものの、わたしは辛うじて自分の足で歩いていた。]