すみません、私をご存知ですか?[その貌に、その声に、覚えはないのだけれど。微かに脳の奥にちらつくその髪の色。あれは、いつのことだったか。 確かに、僕は―――― この人を、知っているような気がする。とても大切なことのはずなのに、思い出そうとすると靄がかかるような感覚につい眉が寄った。隠すように手を額に当てると、お名前をうかがってもいいですか? と首を傾げた]*