――満月の日・引っ越し準備――
≪……、…ぅ≫
[最近の朝はこんな挨拶から始まる。>>36
ブタさん耳の金の輪には震える魔力の波と、今日はかすかない気遣いに混じる声の欠片が届くだろう。
ピギーが朝この部屋を訪れるのも最後だ。
習慣になった寝起きすぐに窓の鍵を開けておくこと。
寝癖の跳ねた髪と、汚れても大丈夫なように洗いやすい部屋着姿で出迎えると、テーブルに2脚の椅子で朝食をとって。
今日の大仕事にとりかかる英気を養った。]
掃除の魔法、もっと極めていかないとなー……。
[まだまだ手作業の方が細やかにできる。
ギルドに返却するものを整え、洗濯物は新たな分はランドリーに、ベッドマットは日の当たる場所に干して。
羊皮紙のメモは予め綺麗に切ってあるから、穴を開けて紐を通し、幾つかの束にまとめていった。
これだけでもかなりの量になって驚いてしまう。
慣れないペンに手を真っ黒にした記憶がよみがえった。]