[メッセージを送ったばかりのスマホ画面を見つめる。
送信先の幼馴染の名前は“デックス”だ。
途切れない関係性の中で呼び方は変化してきた。
ふっと思い出して、名前の文字を指でなぞる。
物心つく頃からの定番は、“デクスターくん”
小学生の中頃だったか、デックスという響きもカッコいいねって、“デックスくん”と変えてみたら、向こうは急に苗字呼びをしてきたのだ。>>37
運命の悪戯というべきタイミングの合い方で。
今なら彼の状況を想像できるけれど、思春期や早くも色恋に目覚めた友人たちよりぼんやりしていた自分はよく分からなくてビックリしてたっけ。
――それくらい実は、幼馴染にべったりだったから。
ひとりでしばらく頭を抱えつつ、デックスくんと呼ぶ期間は短く、デクスターくんというずっと親しんできた呼び名に戻した。
デックスくん呼びが復活したのは、中学生の頃、今度は急に雪!なんて変えてきたしばらく後のことだった。>>37>>38
あの時の幼馴染の顔は真っ赤だった。
我にかえってそそくさ帰り支度をしながら、指先がなぜか震えてて、耳の端が熱くてたまらなかった。
その日から、折に触れ、
雪という響きで熱を生むのが幼馴染だった。
遅れた色恋の開花も引き連れて。]