[辞めたわけじゃない、とアリシアが言う>>33。
フットマンはそれに「そうなのかい」と大袈裟に驚いて見せた。
何もしない方が危険だと、彼女は言う。
そうだろうとも。この嵐は、窓を閉めたところで凌げるものでもあるまい。
流石は、公爵の孫といったところか。それとも、或いは別の──。]
思い出話か?何かするようなモンはあったかな。
[なんて笑ったまま言ったけれど。
「聞いておかなければいけないことがある」と言う少女に、フットマンは半笑いを崩さないまま黙った。
幼い時分──今も見た目は全く変わらないが──に見せていたアリシアの表情がすっと引っ込んだ。非常に、至って冷静。
それだけで、彼女の現在の立場が窺い知れる──守ってくれる相手がいると言われたときに思わなかったのか?
ああ、思わなかったとも!可愛い天使を守りたい誰かなんて、山ほどいるだろうからな。]