────十五年前:女が灼星だった頃
[そのテロリズムが絶頂期にあったのは一昔前の噺。
日々新たな犯罪の手口や事件で上書きされていくこの世界では、世間様が既に忘れつつある時代のこと。
凄惨な世の中になればなるほど人々は宗教や大それた思想というものに縋る様になり、前ならえで安寧を生き長らえる手段を求める。
そうして生まれた教団がいつしか各地で千人単位の根城を構え、あらゆる国において政治に対抗した。
その頂点にかつて存在したひとりのテロリストを誰もが熱愛し、狂信していた。
“我らの星が御座す限り総ては大義と共にあり”──
そんな、傲慢極まりない旗標を掲げながら。]