声に惹かれて入ったなら悪かったな。此処のパンは人間の食いもんじゃねェ。オススメはしない。おれは好きだけどな。 「おい、営業妨害だぞ、坊主!」[男の後ろで店主がプリプリと怒るが、実際この店には閑古鳥が鳴いている。ぎゅるり、と片目だけが白目を向いて、背後の店主を見、男は目の前の相手に肩を竦めてみせた。男は互いの眼前に翳していたパンをくるりと持ち替えて、近くの机を叩いてみせる。ゴンゴン、とパンにはあるまじき音で机を打ったそれからは、パン屑ひとつ落ちなかった。*]