そうだ、首飾りは……できてるな。
[机の上を見て安堵する。石はなんとか彫りきれたらしい。
鎖をつけて完成したものを小箱に収め、入念にサイドポーチにしまい込んだ。
それから一旦部屋を出て、軽く水浴びをして顔を洗い、完全に目を覚ましてから衣装に袖を通す。ズボンは苔のような緑、シャツは金のような糸を微かに刺繍した鈍目の赤褐色。
ただしその上から真紅のビロードのベストを羽織る。
これが祖父の代からの一張羅、らしい。
これによって、たしかに相当派手…というよりは華美な見た目になるだろう。
弟妹達はもう家にはいないらしい。お袋だけは支度がまだだったか、俺が寝坊すると思ったのか(実際したが)家に残っていたから、覗いて声をかけた]