[今しがた粉微塵と化した巨大なビルを遠くに眺めながら、お気に入りの銘柄に火を灯す。この瞬間が一番美味しく感じられるのだ。メディアのヘリコプターが慌ただしく飛来するのも、人々が逃げる事も忘れてその場に立ち尽くすのも。ましてやあのビルに全財産を置いてきた富豪の絶望するさまなんて、無価値への感覚を共有出来た心地さえして大変快かった。テレビの電源を付ける。塵まみれの通行人への街頭インタビューはただただ嗚咽に満ちている。この命は元より、侮蔑と嘲笑で出来ていた。]