─ 回想:シュクル ─
[ シュクルの事は、まだ彼女が赤子の頃から知っていた。
飴を生み出すことが出来る、
なんとも可愛らしい魔法が使える女の子。
子供の頃は幾度も彼女の元へ行き、
また飴玉をくれないかと強請ったりした事もあっただろう。
暁亭に並ぶ飴は、シュクルの作る綺麗なそれとは違う。
伸ばした飴を一定の大きさで切断していっただけの、
無骨な薬草の味の飴だ。
この味が好きだと好んで買う人も中にはいるが…
大半が喉の痛みや健康にと、
そのささやかな薬効目当てに買うようなもの。
飴職人であるシュクルと菓子屋である私は
職業で言えば近い位置に居るというのに、
手先の器用さや作るものの彩りはまるで違う代物だった。]