[ず、ともう一度紅茶をすする。長く泣いたつもりだったけど、紅茶はまだ温かく、泣きじゃくった体を芯から温めてくれた。
さて、これからどうしようかと思案する。
きっと、このままここに居ても誰も文句は言わないし、文句を言う人間は置いてきてしまった。
きっと、向こうに帰らなくても悲しんでくれる人間は居ない、だろうし。
きっと、ここに残れば楽だろう。
きっと、きっと、きっと。
いや。
クッキーを1枚、口に放り込んで、紅茶をもう一口。
キミは、もう居ないけれど。キミは、向こうにいるんだもんね。
キミは虹の橋を渡らずにボクを待ってくれているんだろうか? キミを見送れなかった愚かなボクだけど、待ってくれているんだろうか?
それを確かめてみたいと、思った。その時まで、キミに恥じないように生きていきたいと、思った。
そうしておとなになっていくんだろう。心の傷を踏み越えて、いつかボクは少年から大人になるんだろう。
と、不意に聞き馴染みのない低い声の紅茶の注文が聞こえて、思わず振り返った。>>47
そこには先程まで少年が居たはずなのに、気づけば大人の男性が。
え、とまた驚いた声が自分の口から漏れて、思わず笑ってしまった。本当に、何が起こるかわからない場所だ。]