[もう日数を刻む事にも飽きてしまって、
あの船>>#1が新たな囚人と外界のニュースを運んで来た回数もとっくに分からなくなった。
探し人の話題が新聞に載る事はなく、退屈を凌ぐ為の次なる遊びを探す事で凌ぐ様な日々。
簡単に考えつく“騒動”は全て試してみたけれど、懲罰房のスリルを体験できる切符は終ぞ手に入らず……
いつしかこの檻を鳥籠に近いと思う様になった。
その頃にはもう、身の振り方も心得ている。
他階層の看守が囚人を引き回して現れるのは甚振る為の手段であり、比較的煌びやかでさえあるこの一帯を見せ付ける事で何かを焚き付けるのだと。>>49
我々は変わらず紅茶や煙草でも楽しんでいれば良い。
それが最も効果的な“懲罰”への足掛かりだろうから。
今しがた差し入れを寄越した馴染みの看守の去る姿を一瞥もせず、カーテンもそのままに煙を喫んでいた時のこと。]