─晩春/下駄箱付近─
[腫れた頬を隠すことなく視線を伏せていた。
少し立ち尽くしてしまっていると>>54軽やかな少女の声が届いて、伏せていた顔を上げる。
ぱちぱちと目を瞬かせて、いまさら熱を持った頬に手を触れた。ぴく、と指先が一瞬強張り、けれど頬を隠すようにそのまま触れる。]
そうですね、そうします。
…あの、このことは、ご内密にお願いします。
大事にしたくないんで。
[眉尻が下がる。
チラリと視線を向けたのは、あの二人組が立ち去った方向。
そしてペコリと頭を下げると、下駄箱近くの水道まで歩いていく。
ハンカチを取り出し、水道の水を浸して絞る。そして頬に当てる、その前に。]