[──翌朝の点呼。
貢ぎ物のメイク用品の数々から、まだ新しく使う機会のない品を幾つか見繕って。だけど、嵩張る品ではかえってあの綺麗な顔を再び腫らしてしまうだろうから。]
ねえ貴男、これをあの子にそっと届けて下さる?
昨日この階を引き回されてた黒い髪の女の子よ。
[そう言って看守に握らせたリップスティック。
薄い桃色に色付く一本は自分の趣味でこそなかったが、ひと回りは若く見えるその子が扱ったのなら大層愛くるしく唇を飾るのだろうと。
此処では立ち振る舞い次第で女としての尊厳も保たれるか、若しくは徹底的に破壊されるかだ。
故に彼女が“成功者”の側に辿り着くのかどうかには淡い興味があった。
……それに。
お茶会をするのなら、
一番美しい日の自分を持ち寄りたいでしょう?**]