さて、ここ数か月のパンパス・コート滞在中、取引先との手紙のやり取りを(納品遅延や商品自体の破損についての謝罪その他の対応も含めて)続けていたんだが、その中でこの「着倒れ」のリージョンの服飾や物資に関心を持った相手もいた訳だった。
実際に現地の仕立て屋から生地そのものの販売店まで訪ね歩いてみれば、何軒かの店は輸出について好意的に話を聞いてくれたものだった。生地や資材の生産者のもとまで直接訪ねに行くには、もう少しこの地の住民との信頼関係が必要か。それに、この王国自体の輸出規制のこともあるし……。
決して棚から転がってくる餅ほど甘いモンじゃないが、思わぬ形で新たな事業の拡大の可能性が開けそうではあったのさ。
……「折角この国に来たのだから、商人さんも身を飾りましょうよ」って言われて、仕立て屋の店主が採寸用のメジャーを手に持ってきた時は冷や汗もんだったけどな!
いくら郷に入っては郷に従えとはいえ、黒い羽毛とラインストーンを盛大にあしらい虹色のラメを織り込んだ漆黒の生地のロングコートを店頭で目の当たりにした直後の話だったからなぁ……。