先輩。
[白薔薇はツバサ様の声音で、若者にそう呼びかけました。
自分がかのツバサ様ではないということを打ち明けるのも忘れての呼びかけでしたが、今や白薔薇自らが人違いの誤解を解く必要はなくなっていたのかもしれません。>>1:188>>1:201]
皇先輩。
[茶々丸がいつも自分に向けて言われていた「かわいい」を自分の名の一つだと思ったように。
元の持ち主である兼平理音が心の内で呟いていた「皇先輩」の語がこの若者の名前なのだと、白薔薇は思い込んでいます。
ツバサ様の姿をした白薔薇は、一歩ずつ、「皇先輩」の前に歩み寄ります。
そしてその人の目の前までたどり着いてから、白薔薇はその身を屈めて、静かに口を開きます。]