――自室(過去軸)――
[お互いに勘違いをしてしまう、すれ違う事はよくあることだ。私は急いでいた訳ではない。ただ、アーネスト側に火急の要件があると思い込んでしまっていたのだ。
そして律儀な彼女は私の為に一刻も早くと馳せ参じてくれた。
いつだってヒーローは、呼べばすぐ駆けつけてくれる。
ノックに応えて私は扉を開く。そして――
息を飲んだ。
私の反応の理由を賢い彼女はすぐ察したのだろう。
続く言葉は照れを滲ませて。その頬が桜色に染まっているのを私は見逃さない。
顔を臥せるように下を向いたって、私はちゃんと視界に捉えた。
ふ、と肩の力を抜き。]