―とあるマフィアと―
[振り上げられた拳が、右目にあたる。激しい痛みと、脳が揺さぶられる感覚。>>39
再び振り上げられた腕に手をのばし、思いっきり噛みついた。手折られた花のように、
この男の指のひとつでも食いちぎってやろうと思った。
さすがにそこまでの力はなかったが、皮膚を破くぐらいはできただろう。口の中に広がる鉄の味に、顔を顰める。]
うえええ
[ぺっぺっ、と口の中のものを吐き出す。
自信を持ちあげていた手が離れ、そのまま尻もちをつく。
「てめえが使えるうちは、すきにさせてやる」
そう言い残して、男は部下たちを連れて去っていた。
よいしょと立ち上がり、汚れをはたく。グリムを連れていなくてよかった。
その日以降、彼の部下たちが屋敷に来ることはなくなった。]