― お別れの晩に ―
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目を閉じ、委ねられた彼女の身体をぎゅっと抱きしめる。
細い首に手を伸ばし、絞め殺してしまわないよう、強い衝動を必死に押さえつけて。
いつか、大好きな妹へ贈っていたように、愛してるのハグをした。
暖かに、朗らかに笑っていた妹はもう居ない。
あの日私が殺しちゃった。
とうの昔に冷たくなった妹の記憶を、抱きしめたフィアの温もりの中に微か見つけたものの、永遠にこうして居る訳には行かないから。
だから自分はそっと手を放す。
たった数秒だけれど、思い出としては十分よ。
この記憶を、貴女の代わりに座らせておくから。>>0:206
空いてしまう自分の心の中の椅子の上、愛した証だときちんと書いて。
そうしてずっと覚えておくからね。]