私も実りを、種を、遺したかったな。
[これは、バラ属の植物という生命としての本能。
理音は白薔薇の命を長らえさせるためにその手でバラの花を都度手折っていきましたし、昴にもそう指示していました。
彼女に触れられること自体は、この精霊は心地よく感じていました――この「個」を得てから、そう感じるようになりました。昴は? 彼にはドラムの音色を鮮やかに叩ける繊細なスキルはあっても、それ以外には雑なところがありましたから……。
それでもその意識とはまた別に、種を次に繋ごうとするものの生命が、このバラの中にも例外なくあったのです。
さて、白薔薇の樹霊がここでそう思い起こしたのは、この宿を取り仕切る女将さん自身がその命を“次”の子に捧げてここに辿り着いた人だったから? これはただの偶然だったかもしれませんし……本当にそうだったのかもしれませんね。>>1:*0>>1:*1>>1:*2>>1:*3>>1:*4]