― かつて、朝の王と ―
[それは何年前の話であったか。
彼が所属組織たる『夜の女王のアリア』を抜けると聞いた時の、赤い男の感想は、]
ふぅん
[たった一言、それだけ。
知った相手であれど、彼が抜けると言う事自体にそこまで関心は無かったし、興味も沸かなかった。
彼は『椅子』に座って居たものの、トップである公爵の事も好かないようだったし、彼の性格からして抜けるのは当たり前の事とも思えた。
けれど提示してきた条件は、自分にとってはとても愉快なもので。
いつか元に戻る事を条件にした陣取り合戦。
しかし食うか食われるかの真っ向勝負。それは大層愉快で、興味深い。
幹部役職同士、公爵の下に居た頃、彼と話した事は何度あったか。
互いの関係性を親しい物と思ってくれているかどうかも分からないが、とにかく自分は、彼に対して深い興味が湧いた。]