[卒団式の日。誰からもらったのか、お別れ会のあと、ヴァネッサは小さな花束を抱えていた。『いつかね。舞台に立てたら、一回でもいいから。花束とか、もらってみたい、な。』よく頑張ったね。とか、いい歌だったよ。とか。感謝、称賛、お礼、色々な気持ちが飛び交ういつかの音楽祭の観客席。ぽつりとそう、呟いたのを聞いていた。ヴァネッサの夢の終わりはあっけなくやって来た。"ユズリハ"から帰るとき、ヴァネッサはもう泣かなかった。まだつぼみだらけだった花束は、そのあと、お家の花瓶に飾られた。]