食いしん坊じゃないから。
[コンマ数秒で先回りした。]
このあたりはたしか――に繋がる通りだよね。
比較的治安のいいエリアなのかな。
石畳でもこのブーツ歩きやすいんだ……。
[余所者感丸出しの会話でもあるが、この世界の服を着ている今なら地方から出てきたばかりでも通じるはず。
髪色や瞳も特別珍しいものではないと思うし、変に視線を集めたとしたらピギーと二人連れであるせいじゃないか。
内心でそう考えながら、少し猫背気味で歩いた。
雑貨屋の吊り下げ看板に書かれた読めない文字。
露天に並べられた防具に武器。
知らない動物みたいな名前の鱗からできたなんちゃら――もしかして魔物の名前だったりする?
ポストみたいなものはこの世界にもあるらしい。
道ばたにあるそれをちらりと覗いたら、がま口鞄をぶら下げた大きな鳥が飛び出してきた。
異世界の動物は働き者で、元の世界では考えられない。
傍らを通り抜けた二人組は魔法と物理どちらが強いかについて熱い論争を繰り広げている。]