[そんな時に不意に背後から聞こえた声>>58に、ハリコはびくりと肩を震わせて振り返った。
“Harrikoの女”、とこちらの素性を既に知っているらしきことをハリコがちゃんと意識したのは、やや遅れてのこと。]
あなた、は―――…
[一度見かければ絶対に忘れようがない、ある種の虫めいた触覚と黒く浮き出た外骨格。
(羽化を経ている>>40ことまでは見た目からは判らなかったのだが……)
いつだったか医務棟で見かけたにも関わらずこちらから何も声を掛けなかったのは――実験体ならぬ“普通の市民”の感覚からの忌避といっていい。男性に見えるから、というのを通り越してしまう程の。]