カウントダウンの前の日々
[これはケンチクとの例の会合
>>46>>47>>48の前の、過去のどこかの話。
偶然、独房一帯を巡回中の看守たちの噂話を聴き拾った。
その内容自体は、この監獄においてさして新しいニュースでも何でもない。ただ単に、収監中の無差別連続殺人鬼にして死刑囚“
ルミ・ビリヴァー”がどうのこうの、というだけの話。
同室の女囚の指を折っただの、相変わらずヤバい女だの、そんなゴシップめいた他愛ないお喋りだったが――。
ハリコの中で一番強く印象に残ったのは、その名前そのものだった。]
(………………、
「ルミ」なんて名前、ありふれてるわ)
[あの日、まるでエスコートみたいに差し出されたルミの手
>>0:376のやわらかさ――ハリコの記憶の中ではそうなっていた――が、ふと思い出された。
その時は、彼女からの「エスコート」にすぐさまに応えた訳ではなく、幾らかの小さな躊躇の後にその手を取ったものだった。]