[白薔薇が「先輩」に呼びかけた当初、その人は顔すらも上げませんでした。>>65>>66>>67
ただ一度、呼びかけに対して、震える身体をびくりと揺らしたのみ。
それで白薔薇は、雪だるまの傍で震える「先輩」との距離をさらに詰めて、「どうして」と問いました。
呼びかけに応えない相手をそっとしておくという発想は、この時の白薔薇にはありませんでした。
(序にいえば、浴衣姿の人間を室内に引っ張ったり何か暖かいものを着せたりする、という発想もありませんでした)
それこそ言葉を返さないバラに対して間近に向き合う人間のように、白薔薇は文字通り真正面から、その若者に向き合おうとしたのです。]