[たとえ柔らかい雪のように穏やかな声音なれど、凍てつく雪のように責める言葉遣いでの、白薔薇の問いかけです。
ここで「私だけでなく」と口にしたのは、この樹霊なりの自責の念があるということ(決して自分の所為ではないのに、です)。
そんな自責と同等の言葉を「先輩」に投げかければ……。>>68]
っ、――――――。
[今度は白薔薇のほうが、寒さとは異なる衝撃で身体を震わせました。怒気とも悲鳴ともいえる叫び声という形でのヒトの声音は――「死にたくなかった」の叫びは、「生きたかった」バラが得たヒト型の身体に、清らかなれど冷たい大気越しに振動を伝えていたのです。>>69]
先輩。
[幾らかの間の後、白薔薇はもう一度その人に、先程よりも小さな声で呼びかけました。丸まったままのその人の目の前で、極力視線の高さを合わせるように身を屈めたまま。
音なく零れる涙の混じる声音で紡がれるこえに、耳を澄ませます。>>70]