―ヘルハウンド―
[少し前、ひとつの組織がなくなった。
それ自体はよくあること。増えるも減るも、大差ない。
『ヘルハウンド』
ほぼ血縁者で構成されていたその組織は、ひとりの裏切り者によって崩壊した。
ほとんどが殺された。生き残ったものは、別の組織にはいったり、よその国へ行ったり、中央通りに移ったりと様々らしい。
「らしい」というのは、ぼくがうんとちいさい赤ん坊の頃の話だから。いまでも生き残りがいるのかはわからない。
住宅街から離れた場所にある唯一の屋敷で、祖母に育てられた。両親の顔は知らない。写真もないから。
はじめて遺体を連れて帰ったとき、彼女をひどく驚かせてしまった。