── 遊戯の時間>>204>>205 ──
相手が抱く油断と慢心は自分ではコントロール出来ないだろう?
自身の力量を飛びこえて、相手の心次第で決まる道など、奇跡でしかないと、私は思うわけだよ。
[視線が同じ者などおらず、それを擦り合わせる力は人間の特性とも言えるだろう。彼の言葉を借りればチューニングと言うべきか。
最も、私の場合チューニングするより先に弦の交換をした方が早いとさえ思わせてしまいそうなものだが。]
あぁ、どうにも。現実を見据えて合理を追究するのに少々飽きてしまった。
こう見えて研究者を生業にしていたものでね。
あれほどつまらない仕事はそうはない。
[それを伝えたのは、彼が盤上の断罪を済ませた頃だろう。捌かれた球がポケットに吸い込まれてしまえば、彼の演舞も幕切れのようだ。]