[さて白薔薇の樹霊は、生前には、すぐ傍の人間の心の内を感じ取ることのできる不思議な精霊でしたが……。
この不思議なお宿で出会った者たちの心の内やその記憶までは読み取れないことも多々あります(それでえりざべーとや茶々丸の感情や文意を誤解していたのでしょうね)。少なくとも、桃李があの時に抱いた意思の記憶>>73>>74を、この時の白薔薇は読み取っていません。
それでも白薔薇は確かに、ここで「人に向けてはいけない感情」という言葉を発していました。>>83
白薔薇のこの言葉は、あの『告白』>>1:211という作品に籠められたメッセージに基づいたものです。
“苦しみも、醜い感情も告白していい”。
“無理してまで嘘つきになんて、ならなくていい”。
ツバサ様のこの歌が中学生の頃の兼平理音を救い上げた>>1:213>>1:214ことを思い出したことが、ここで白薔薇が発した言葉に現れていたのです。
あの頃の理音に一体何があったのかは、ここでは置いておきます。ただ少なくとも、桃李の身に起きたこととは異なる苦境ではあったようです。
(おそらくこの苦しい思い出は、今年出会った新たな「仲間」の桃李には、まだ「告白」してしないことでしょう)*]