― 一月/冬空のベンチ ―
[試験を終えた生徒がぞろぞろと会場を出て行く。
結月もその列に続いた。外に出ると冷たい空気が肌を刺す。]
……もしもし、お母さん?
[スマホを耳に押し当てながら、結月は人の波を外れた。
細い隙間を通り抜け、自販機隣のベンチへ腰かける。
大通りへの道から正反対の場所にあるからか、人の通りは少ない。
マフラーへ口元を埋めた。下ろした髪がもふりと乗る。]
うん……まぁ、自己採点してみないことにはだけど、そこそこ。
数A覚悟してたけど時間も何とか足りたし。
うん……うん……大丈夫、歩いて帰るから。
お母さんこそ冬休み明けでしょ。電話してて平気?
[両足を交互にぶらぶらさせながら会話を続ける。
母の用件が終わったのか、返事をしていた結月の口も閉じた。]