[ハッカーとしての腕はそれなり。
けれど、生身の脳にはお手上げだ。
そこにどれだけ情報が入っていようが、ケーブルと自身の電脳でこじ開けられるものでは無い。
故に取るのは尋問などと言うガサツな手段なのだが――、そこは自分の領分ではないだろう。
生身の脳相手にはめっぽう弱いのが自分と言う存在。
故に非電脳組織と言うのもあり、『リベリオンマウス』関連の情報はまるで手に入らない。
特に特別な指令を受けた訳でも無く、興味本位単独で潜った事もあったが、ピンと来る情報は得られなかった。
――他組織に対する勝手なハックはご法度。
争いの種は避けるべき。それぐらいは分かっているが、好奇心は抑えきれない。
けれども今回も、面白い成果はナシ。
何かある筈なのにつかめない、そんなもどかしさを感じる。
ハズレを引き当てたことを確認すれば、踏み込んだ足跡を丁寧に消した後、己の後頭部から延びるケーブルを引き抜くと、眼鏡型端末の電源を落とす。
誰かがアクセスした痕跡ぐらいは残っていたかもしれないが、その主は分からない。そんな所か。
そういう日もあっただろう。**]